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COMMENT from Shinya Tsukamoto INTRODUCTION STORY CAST DIRECTOR PRODUCTION NOTE DISC
悪夢探偵2
 
 

子供のころ、夜が怖くてしかたがありませんでした。
夜中にオシッコがしたくなって目覚めるのがいやなので、寝る前は、これでもかというくらいオシッコを絞り出してから床に入りました。悪夢もよく見ました。日本の伝統的な幽霊である、白い服、長い髪の女は、やはりぼくの夢にも登場し、終始その幽霊から逃げ惑っていました。夜眠る、という行為は、子供のころの自分にとって、毎夜行われる死刑執行のような感じでありました。

人はなぜ、怖い、という感情を持つのでしょう。

今回の映画では、主人公・京一の母親の死の謎に迫りながら、怖い、という感情の秘密を探りたい、と思いました。

最初に悪夢探偵を思いついたとき、京一を厭世的な人間にするために、幼いころ母に殺されそうになったことがある、と決めていました。今回の悪夢探偵は、京一の出生の秘密を紐解くため、この母の謎に迫らねばなりません。

この映画を作っている間じゅう、恐がりの自分を育てた母のことがずっと頭にありました。そして今、目の前で子供を一生懸命育てている妻のことも。ふたりとも映画に登場する京一の母親とはまったく似ていませんが、彼女たちへの共感や感謝がこの映画の道しるべになりました。まだ闇の世界からこの世界に来て間もない子供を育てる妻。きっと妻と同じように奮闘してくれたのであろう母。

 

母は今、自らが闇の世界に何度も足を突っ込みながら軌跡を起こして帰って来てくれています。子供や母を通し、僕自身が、この世界に来る前の闇、これから先にいくのであろう闇の存在を身近に感じ、奮闘する日々です。

僕の息子が5歳になり、夜を怖がるようになり始めました。
この映画を通し、今こそ自分自身が悪夢探偵となって、怖い、という感情の秘密に迫り、恐がりの自分の子供を救い、さらには自分の子供のころの枕元に降り立ち、子供時代の自分を救ってやりたい、そう思いました。

怖さとは、本来自然の中に潜む、広大な闇にあった気がします。闇はいろいろなものが棲む想像の宝庫で、僕は最近になって、そういう闇がどんどんなくなっていくのを悲しいと思っていましたが、現代の都市においては、闇がなくても、その蛍光灯の鈍い明かりの中にも恐怖の因子が存在します。この都市生活ではあたらしい怖さがあり、複雑になった人間関係の中にも怖さの原因が隠されている気がします。子供のころに怖かったものが、大きくなるにつれ、変化していくことに哀しみのような感情が湧きます。
悪夢探偵とは、そういうどうしようもない哀しみに向き合わざるをえないヒーローなのだと思います。そして少しの光明を自分たちに知らせてくれる存在なのでしょう。

 
 

湿り気のあるセピアの夢から浮かび上がるのは、亡き母の悲しい記憶。それは、茫漠とした恐怖に怯える母が、「怖い、怖い…」と、まだ幼かった自分を拒絶する姿。「何がそんなに怖いの?」「お母さんはどうしてボクを怖がるの?」——。そんな過去を背負った男は、やがて他人の夢の中に入れる特殊能力をもった“悪魔探偵”と呼ばれる存在になっていく…。

07年、恐るべき破壊力を持つ作品として世界に向けて発表された『悪夢探偵』の続編が、早くも完成した。しかしそれは上質なサイコサスペンスのような構造を持った前作の続きではない。なぜ影沼京一は悪夢探偵となったのか?その秘密に迫る“序章”とも言うべき物語。新たな依頼者である女子学生の悪夢の謎と、亡き母の死を巡るエピソード。この2つの物語が同時進行し、やがて一つに繋がるとき、我々は「怖さ」と「優しさ」が同居した未だかつてない芳醇な人間ドラマを観ることとなる。

“悪夢探偵”である京一のもとに、新たにやってきた依頼者は、悪夢で眠れないと訴える女子学生の雪絵。一度は冷たく突き放す京一だが、雪絵の悪夢に登場する“異様なほど恐がりの同級生・菊川”の存在に、亡き母の記憶を呼び起こされる。それは、すべてのことに怯え、その恐怖に耐え切れず自らの命を絶った母・逸子の記憶。菊川を通して、母の思いを知りたいと願う京一は雪絵の夢に入ることを決意する。京一は母の思いに辿り着き、彼女たちを救うことが出来るのだろうか…。

新たな悪夢探偵の魅力を引き出したのは、“世界が認める鬼才”塚本晋也。作品ごとに話題を呼ぶその独自の映像センスは、常に世界レベルの注目を集めている。そんな彼が、長編11作目にして明らかに新たな領域へと足を踏み入れ、自身の最新作であり最高傑作を作り上げた。

主人公の影沼京一を演じるのは、前作に続いての登板となる松田龍平。今や日本映画界を代表する存在となった彼が、前作にも増して京一の人間性を見事に体現している。依頼人の女子学生・間城雪絵を演じるのは三浦由衣。その個性的な顔立ちと自然体の演技で、300人を超える候補者の中から見事ヒロイン役を射止めた。雪絵を眠らせない悪夢の正体、極端な恐がりの菊川役に『誰も知らない』の韓英恵。年齢を超えた存在感で確かなキャリアを積む彼女が、事件のキーとなる役で確かな演技力を見せる。また、近年は、舞台やTVドラマで、コメディエンヌとしての新たな一面を覗かせる市川実和子が、京一の母という振れ幅の激しい難しい役どころを見事に演じきり、観る者すべての心を掴む叙情的な演技を見せている。その妻を自殺から救えなかったことに苦悩し続ける京一の父・滝夫役に日本映画界を代表する名バイプレイヤー光石 研、その他、内田春菊、北見敏之らが、確実な仕事でしっかりと作品の核を支える。

静寂な恐怖の果てに見えてくるのは、切なく美しい物語。恐怖という感情に迫りながら、やがてあたたかい感動に満たされる新たな傑作が誕生した。

 
 

イヤイヤながらも、他人の夢に入るという特殊能力を持ってしまった影沼京一(松田龍平)は“悪夢探偵”と呼ばれていた。そんな彼の前に新たな依頼者、女子学生の間城雪絵(三浦由衣)が現れる。「悪夢を見て眠れないんです。助けて下さい」。雪絵の悪夢に登場するのは同級生の菊川夕子(韓英恵)。菊川は異様な恐がりで、それを面白がった雪絵は睦美(安藤輪子)とアキ子(松嶋初音)を誘い、ちょっとしたイタズラのつもりで彼女を体育倉庫に閉じ込める。しかしその日から菊川は不登校となり、雪絵の悪夢に姿を現すようになる。京一は自分の夢に入ってほしいと頼む雪絵を、「本当に悪いと思うなら、ちゃんと会って謝ればいい」と冷たく突き放す。

そうして最初の事件が起きる。睦美が原因不明の心臓発作で急死したのだ。しかも授業中に居眠りをしたまま隣の机に頭を強打すると言う異様な死に様だった。「次は私かもしれない…」。パニックに陥った雪絵は再び京一に助けを求める。雪絵は母子家庭で、母親の貴理子(内田春菊)は仕事のことで頭が一杯のため、娘の問題に気持ちを向ける余裕がない。雪絵が頼れるのは京一しかいなかった。「ああ、いやだ。ああ、いやだ、いやだ…」。京一は重い腰を上げ、菊川の家へ向かう。

雪絵と出会ってからの京一は、亡き母、逸子(市川実和子)のことをしばしば思い出していた。人の心の奥底に潜む悪意までも透けて見えてしまう繊細な心を持った逸子は、自分を取り囲む世界すべてを恐れていた。そしてそんな世界に京一を産み落としてしまったことに罪の意識を感じ、自分と同じように他人の心が見えてしまう京一を恐れてもいたのだ。生きていることそのものが恐ろしい——逸子は周りのものを傷つけ、やがて自分自身を傷つけて命を絶ってしまう。

菊川の家を訪れた京一は、彼女が描いた暗黒の闇を思わせる絵画の数々を目にする。自分を取り巻く世界そのものを怖がる菊川の精神性は、やはり亡き母を思い出させた。しかも追い討ちをかけるように、今度はアキ子の急死の知らせが入る。「菊川は母に似ている。いま会わないと、取り返しのつかないことになる気がする」。京一はようやく、雪絵の悪夢に入り込む決意をする。最後に背中を押したのは、自分の存在を拒絶したまま亡くなってしまった母との絆を取り戻そうとする、京一自身の、魂の再生への強い意志だった…。

 
 

1983年5月9日、東京都出身
99年、映画『御法度』(監督:大島 渚)でデビューし、ブルーリボン賞、キネマ旬報ベストテン、日本アカデミー賞、ゴールデンアロー賞など数々の新人賞を受賞。以後、いくつかの作品を経て、02年『青い春』(監督:豊田利晃)に主演、その圧倒的な存在感に改めて注目が集まる。その後も『昭和歌謡大全集』(03年/監督:篠原哲雄)、『恋の門』(04年/監督:松尾スズキ)、社会現象となった大ヒット作『NANA』(05年/監督:大谷健太郎)など単館系の作品から大作まで幅広く出演。
07年には、初のシリーズ作品である本作の第1弾『悪夢探偵』に出演し、個性的な演技で新たな一面を見せた。同年は映画『アヒルと鴨のコインロッカー』(監督:中村義洋)、『伝染歌』(監督:原田眞人)などの映画のほかに、初の連続テレビドラマ「ハゲタカ」(NHK)で高い評価を受ける。続けて08年1月には初の民放連続テレビドラマ「あしたの、喜多善男〜世界一不運な男の、奇跡の11日間〜」(KTV)に出演し、更にその活動の場を広げた。
09年にはモントリオール世界映画祭・最優秀脚本賞受賞作『誰も守ってくれない』(監督:君塚良一)、『劔岳 点の記』(監督:木村大作)、『蟹工船』(監督:SABU)など。また、09年NHK大河ドラマ「天地人」にて伊達政宗を演じる。日本映画界を牽引する俳優として常に第一線で活躍する存在。

1992年8月20日、埼玉県出身
少女モデルとしてデビュー後、04年に映画『Jam Films 2』の一篇『FASTENER』(監督:丹下紘希)で映画デビューを果たす。本作では約300人を超す公募者の中から、その場に居合わせた審査員の満場一致でヒロインに抜擢される。
清涼感のある佇まいの中に凛とした力強さを併せ持った存在感に、今後の活動が大いに注目される。主な出演作に『春のユウウツ』(08年/監督:室井孝介)などがある。趣味は油絵、写真撮影と、アーティスティックな一面をのぞかせる。

1990年11月7日、静岡県出身
僅か10歳の時に、ベネチア国際映画祭正式出品の『ピストルオペラ』(01年/監督:鈴木清順)で小夜子役に抜擢され、注目を集める。以後、その個性的な顔立ちから気鋭の監督とのコラボが続く。カンヌ国際映画祭で絶賛された『誰も知らない』(04年/監督:是枝裕和)、ニュー・モントリオール国際映画祭コンペティション部門、ベルリン国際映画祭Panorama部門に出品された『疾走』(05年/監督:SABU)と、世界三大映画祭出品作への主演経験を持つ実力派女優。その他、『ハーケンクロイツの翼』(04年/監督:片嶋一貴)では小栗 旬との共演を果たし、『乱歩地獄』の一篇『芋虫』(05年/監督:佐藤寿保)、『黄色い涙』(07年/監督:犬童一心)と個性的な作品へ意欲的に出演している。『memo』(08年/監督:佐藤二朗)では主演を務めた。

1961年9月26日、福岡県出身
『博多っ子純情』(78年/監督:曾根中生)で映画デビュー。以来、100本以上の作品へ出演を果たす。『EUREKAユリイカ』(01年/監督:青山真治)で第16回高崎映画祭最優秀助演男優賞を受賞。また、英 ピーター・グリナウェイ監督、米 テレンス・マリック監督、韓 イ・シミョン監督、タイ ペンエーグ・ラッタナルアーン監督などの海外作品にも多数出演。07年は、『それでもボクはやってない』(監督:周防正行)、『めがね』(監督:荻上直子)など出演作が目白押しとなった。その他の出演作品に、『Sweet Rain 死神の精度』(08年/監督:筧 昌也)、『感染列島』(09年/監督:瀬々敬久)、『20世紀少年-第2章-』(09年/監督:堤 幸彦)などがある。塚本作品への参加は『ヒルコ/妖怪ハンター』(91年)以来、約17年ぶり。

1976年3月19日、東京都出身
ファッション雑誌を中心にモデルとして活躍。映画『アナザヘブン』(00年/監督:飯田譲治)で映画デビュー。その後も『リリイ・シュシュのすべて』(01年/監督:岩井俊二)、初主演を務めた田口ランディ原作の『コンセント』(02年/監督:中原 俊)、『昭和歌謡大全集』(03年/監督:篠原哲雄)など話題作に立て続けに出演する。近年は、三木 聡監督の大ヒットテレビドラマ「帰ってきた時効警察」(07年)や映画『イン・ザ・プール』(05年)などでコミカルな演技を披露し、女優として新たな一面を開拓した。
その他の出演作に『オペレッタ狸御殿』(04年/監督:鈴木清順)、『タナカヒロシのすべて』(05年/監督:田中 誠)、『鏡心』(05年/監督:石井聰亙)、『待合室』(05年/監督:板倉真琴)などがある。また、06年には、松尾スズキ主宰の劇団大人計画の舞台「まとまったお金の唄」に客演。08年8月にも同演出家、作・演出の舞台「女教師は二度抱かれた」に出演し、更にその活動の場を広げている。09年はテレビドラマ「トライアングル」(KTV)がある。

1987年11月13日、東京都出身
04年、コミック誌「週刊ヤングマガジン」のミスマガジンで審査員特別賞を受賞、グラビアデビューを果たす。06年、連続ドラマ「アキハバラ@DEEP」(TBS)では天才少女プログラマー・イズムを演じ一躍注目を集める。その後は、女優としてだけでなく、ゲーム、サブカルチャー、など多種多様な文化に精通し、タレントとして独自のポジションを確立する。主な主演作に映画『Dear Friends』(07年/監督:両沢和幸)、TVドラマ「きらら研修医」(TBS)、「正しい王子のつくり方」(テレビ東京)等がある。

1992年6月4日、神奈川県出身
僅か数回のオーディション経験ながら、均整の取れた体つきとナチュラルな演技が塚本監督の目に留まり、本作の睦美役に抜擢される。ネットムービー「ドロップ」(08年/監督:横井健司)では、本作でアキ子役を務めた、松嶋初音と再び共演。08年8月には、初の舞台「聖ルドビコ学園2008」で主演に抜擢される。今後は女優としてのキャリアを追求しつつ、多方面に活躍の場を広げていく。

1959年8月7日、長崎県出身
84年に、4コママンガで漫画家デビューし、その後は、「物陰に足拍子」、「波のまにまに」、「幻想の普通少女」、「南くんの恋人」などで、セックスシーンもリアルに描ける非少女漫画系・女性漫画家の代表格として人気作家となる。93年に発表した初の自伝的小説『ファザーファッカー』が大べストセラーとなり、翌94年には『わたしたちは繁殖している』とあわせて第4回Bunkamuraドゥ マゴ文学賞を受賞した。
また俳優としても、そのアクのある存在感は引っ張りだこ。『ビジターQ』(01年/監督:三池崇史)、「MASK DE 41 マスク・ド・フォーワン」(01年/監督:村本天志)、『昭和歌謡大全集』(03年/監督:篠原哲雄)、『赤目四十八瀧心中未遂』(03年/監督:荒戸源次郎)、『グミ・チョコレート・パイン』(07年/監督:ケラリーノ・サンドロヴィッチ)など多数の作品に出演している。塚本作品への参加は99年の『双生児』に続き、2度目となる。

1951年5月27日、東京都出身
75年〜00年演劇集団 円に所属。以降、数多くの映画、テレビに出演する。知的な役から悪役まで、幅広く演じ分けられる個性派俳優。主な代表作に『スワロウテイル』(96年/監督:岩井俊二)、『火垂』(00年/監督:河瀬直美)、『GO』(01年/監督:行定 勲)、『13階段』(03年/監督:長沢雅彦)、『それでもボクはやってない』(07年/監督:周防正行)等がある。 08年は『陰日向に咲く』(監督:平川雄一朗)、『アフタースクール』(監督:内田けんじ)、『TOKYO』の一篇「メルド」(監督:レオス・カラックス)、『トウキョウソナタ』(監督:黒沢 清)、『ヘブンズ・ドア』(監督:マイケル・アリアス)、『コドモのコドモ』(監督:萩生田宏治)、『のんちゃんのり弁』(09年公開予定/監督:緒方 明)など数々の話題作に出演している。

 
 

1960年1月1日、東京都渋谷区出身。

TV番組「ウルトラQ」と江戸川乱歩作品に心酔した幼少期を経て、14歳で初めて8ミリカメラを手にする。高校時代に8ミリ映画制作へと一気にのめり込むと同時に、唐十郎の“状況劇場”や寺山修司の“天井桟敷”といったアングラ芝居にも魅了され、日本大学芸術学部美術学科在学中は自ら劇団を主宰。同校卒業後、CF制作会社に入社し、ディレクターとして4年間勤める。退社後の85年“海獣シアター”を結成、3本の芝居を興行する。

86年『普通サイズの怪人』で映画制作を再開。続く、87年『電柱小僧の冒険』でPFFアワードグランプリを受賞。89年、肉体が金属に侵食されるサラリーマンの恐怖を描いた、サイバーパンクムービー『鉄男』を発表。同作でローマ国際ファンタスティック映画祭グランプリを受賞すると、僅か1作で“TSUKAMOTO”の名を世界中に知らしめる。その後も快進撃は続き、92年『鉄男Ⅱ BODY HAMMER』は、世界40以上の映画祭へと招待され、昨今の日本映画の海外映画祭出品の礎を築いたと言われている。

また、製作・監督・脚本・撮影・照明・編集・美術・出演と制作に関わるほとんどの作業に関与するスタイルから生まれる独自の映像表現は、世界の映画人をも魅了し、95年に発表した恋愛ボクシング映画『東京フィスト』は、ブラッド・ピット出演のハリウッド映画『ファイトクラブ』(99年/監督:デヴィッド・フィンチャー)に多大な影響を与えたという逸話をもち、『KILL BILL/キル・ビル』のクエンティン・タランティーノ、『SAW/ソウ』のジェームズ・ワン&リー・ワネル、『カルネ』のギャスパー・ノエ、『レクイエム・フォー・ドリーム』、『レスラー』のダーレン・アロノフスキーなど世界の名立たる映像作家が“塚本フリーク”を公言している。02年には『六月の蛇』でベネチア国際映画祭・コントロコレンテ部門で審査員特別大賞を受賞。同映画祭では、北野武監督作品『HANA-BI』がグランプリを受賞した97年と、05年に2度に渡って審査員も務めている。04年には『ヴィタール』でシッチェス国際映画祭 最優秀作品賞を受賞。

俳優としても、自身の監督作に出演するほか、『119』(94年/監督:竹中直人)、『殺し屋1』(01年/監督:三池崇史)、『クロエ』(01年/監督:利重 剛)、『とらばいゆ』(01年/監督:大谷健太郎)、『クワイエットルームにようこそ』(07年/監督:松尾スズキ)など数多くの話題作に出演。近年では、「セクシーボイスアンドロボ」(07年/NTV)、「土曜ドラマ・フルスイング」(08年/NHK)といったテレビドラマにも出演している。また監督作である「六月の蛇」(マガジンハウス刊)、「悪夢探偵」(角川文庫刊)の小説版を自ら執筆するなど、その活動は多岐に渡り、07年1月には「哀しい予感」(原作:よしもとばなな)で約20年ぶりとなる舞台演出を手がけた。 09年は新作、TETSUO PROJECT(仮称)撮影中。

 
 

07年1月の『悪魔探偵』公開から『悪魔探偵2』誕生までは、どんな流れがあったのか。“悪魔探偵シリーズ”は、もともと3部作の構成で、3つのプロットが用意された。「2本目はジャパニーズ・ホラーのような女子高生の話。3本目は夜が怖かった自分の子どものころの話で、京一のトラウマに迫って終わろうと考えていました。この二つのアイデアを一本化したのです」。さらに5歳になる監督自身の息子が「夜が怖い」と言い始めたことと、実生活で老いて弱っていく母親を前に強い情が沸いたこと、それらが物語への感情移入を高めた。では今後、シリーズはどこへ向かうのだろう。「パート2で悪夢探偵の成り立ちまでを描きましたから、これ以降はどんな世界へ行くのも自由。“ヘンテコ悪夢探偵”“悪夢探偵 番外編”“少年向け 悪夢探偵”それこそ夢の世界のような、実験的な悪夢探偵も可能かもしれません(笑)」。

異様に怖い女、菊川というキャラクターはいかに生まれたのか。「たとえば『シャイニング』などの映画で怖がらせる側のジャック・ニコルソンより、それを怖がる女の顔の方が怖い(笑)。『メトロポリス』などもそう。無声映画ですから演技はオーバーで、怪物に追いかけられた女が目をむいて怖がったりする。そういうのを見ると、怖がる女は怖いなと」。そうして異様に怖がる女、菊川が生まれる。「ジャパニーズ・ホラーの典型的なものをつくろうとしたとき、どうしても怖い表現ができる気がしなくて。ただ一点、そこに異常に怖がる女の子がいたら?と考え出すと、情緒が不安定になるくらい怖くなった」。こうして、物語は転がり始めた。

ジャパニーズ・ホラーに描かれるような日常の恐怖と、日本の典型的なお化けが怖かった幼少時代の記憶への回想。それが『悪夢探偵2』で描かれる恐怖の正体だった。その前者、日常的な恐怖とは?「例えば夜中に鏡をじーっと見ると、そこに映っているのが自分そっくりの他人かもしれないという考えがよぎる。それで目を反らすと“反らしてやんの。怖がってるよ〜”と考える自分が怖くて余計にじっと見入ってしまい、“何でこんなに見てんの!?”という思いが湧き上がってまた怖くなる。そんな感覚」。そうした恐怖を感じたときに神経は過敏になり、「まるで鳥目になったように」明るさを感じる感覚が一段階落ちるという。「日常の些細な恐怖を描きながら、おもちゃ箱のように面白い映像を入れていきました。それで“自分はどうしてそういうことが怖いんだろう?”と考えた。そんな恐怖を、お客さんにも味わってもらえたらいいなと思って」。

映画の始まりとなった要因のひとつが「夜が怖かった子ども時代を見つめたい」という思いなら、ここで登場する悪夢も監督自身のものだろうか。まずは白装束で髪の長い女の幽霊について。「夢で見ていたのはちょうどああいう日本でもっとも典型的な幽霊でした。日本人の恐怖心をもっともくすぐる王道のような幽霊ですね」。また、遠足をする子どもたちの幽霊については、「ちょっと思いついちゃったもので、あれは僕の夢ではありません。自分たちが死んだことに気づかずに、ずっと遠足をしている子どもたちって、考えると可哀想で(笑)」。そして物語のキーとなる、体育館内に設置されたトイレの悪夢について。「あれは奥さんが見た夢なんです。体育館のトイレがあって、隣のトイレの様子が筒抜けで、なんとなくそこに怖い人がいるのがわかる。その人が自分にパッと水をかけるという夢でした。それを聞いて、致命的に怖いなと(笑)。実際に人が見たものだけに、ただデタラメな設定で夢っぽく作った夢より、本物の夢らしいですよね」。

“悪夢探偵”こと影沼京一を演じたのは、前作に続いて松田龍平。「前作で初めてご一緒したので、最初はお互いに探り合いのようなところがありました。完成した映画を見て、龍平さんは作品を気に入ってくださったようです。今回のパート2は大変の乗り気で、強い意気込みを感じました。もともと、とてもナチュラルな演技をされますが、今回はより強く何かを表現しようという意志をハッキリ感じました」。クライマックスには、感極まった京一が涙を流すシーンも。「テストをすると、すでに感情が込み上げているようでした。そこでタイミングを外すともったいないので、すぐにテストを止め、カットを割らずに感情の流れをそのまま演じてもらえるように準備しました。そのまま本番へ。あれは一発撮りでした」。

パート1→パート2へ。悪夢探偵というキャラも変化した。「今回の悪夢探偵の衣装は、マントじゃなく雨合羽にしました(笑)。パート1を小説にしたとき“マント”と書くと、リアルでない気がして。映画はマントでよかったんですが、文字で書いた瞬間ふにゃふにゃふにゃっと興ざめしたんです。それで“近くの○×ショップで買った安物の雨合羽を着て…”と書くと、ピッタリとハマった。でも、ヘニャヘニャでペラペラの雨合羽のほうが龍平さんの“裸感”が出ると思いました。マントの時は、江戸川乱歩の世界のようなニュアンスが出ると思ったんですね。僕にとって探偵といえば乱歩なので」。

塚本作品では毎回、インパクトあるヴィジュアルに注目が集まる。シリーズ1作目の前作は「ブルーフィルターをかけたディテクティブもの、都市型スリラーと、ゾンビ・ホラーが混ざったような映像表現で、色彩はモノクロに近いカラーを目指しました」。では今回のコンセプトは?「雪絵の学校のシーンはジャパニーズ・ホラーのように、ごく日常的な映像にしました。なかでも体育館の悪夢のシーンは白っぽくして。暗いところではなく、明るいところで菊川に水をかけられたら終わりというのもいいかなと。それで京一の子ども時代の回想シーンは懐かしいような怖いような映像。いつもの自分の映画の感じというか、自分のコブシを効かせました(笑)」。

『悪夢探偵』の特撮は一筋縄ではいかない。前作では顔の中心に向かって「肛門のように」皮膚がめり込む特撮で、人の心の奥底に潜む悪意が見えてしまう人間の恐怖をヴィジュアル化することに成功した。今回そうした独特の特撮はさらに進化。人々が表面に出さない悪意を、顔をパッカリと裂く深い闇によって表現した。「一つ一つ自分で絵を描き“顔に穴の開いている怖い映像をつくってください”とリクエストしました」。 雑誌の表紙やテレビに映るリポーターの瞳が片方だけ大きく歪む映像も奇妙な恐怖を呼ぶ。「いかにも怖いのではなく、なるべく日常的な恐怖にしたかったんです。情緒が不安定だからそう見えるだけ、みたいな」。確かにリポーターの歪んだ片目が画面に映るのは、見間違い!?と思うほど一瞬。だからこそ、そう見えたのは自分の側に問題があるようでひやりとする。そして特撮での最大の見せ場は、雪絵の悪夢の中に入り込む京一の映像。京一は雪絵の体を破ってその夢の世界に入り込む。すると雪絵の人形は抜け殻のようにフニャっとつぶれて床に落ちる。「フニャっという雪絵の人型をつくり、その人型の顔と正確に角度を合わせて雪絵の顔をCGでつけました。出てきたな〜って感じですよね(笑)」。

京一はなぜ悪夢探偵となったのか。その謎には亡き母との関係が暗い影を落とす。「この設定は若いときにパッと決めちゃったんです。母親が自分を殺そうとしたらいちばん嫌だろうなと。ただ僕自身の母はごく普通の人ですから、ああいう母親をリアルに描けないかもしれない。ところが今回発見したのは、全く異なる母親像を描く過程でいろんな思いが溢れてきて自分の感情が物語に乗り、感情移入できるってこと。暫定的なテーマでもそれについての作品をつくれば、そのとき自分にとって大事なものが如実に入ってしまうものだとわかりましたね」。

 
 

品番:BIBJ-7675
発売日:2009.6.26 発売予定
スペック:
カラー / 本編102分 / 片面2層(本編ディスク) / 2枚組
価格:4,700 円(税抜)
画面:16:9LB
音声:日本語ドルビーデジタル2.0chサラウンド
製作国:日本
製作年:2008 年

【初回限定特典】
アウターケース

【特典映像】
■DISC1 本編ディスク
劇場版予告編
■DISC2 特典ディスク
○MAKING OF 悪夢探偵2
メイキング映像と監督、キャストのインタビューを交え熱い制作現場が甦る!!
○VISUAL DESIGN OF 悪夢探偵2
特撮、CG、美術、すべてを融合し創られる塚本監督の世界が明らかに!!
○PROMOTION OF 悪夢探偵2
完成披露記者会見&試写会舞台挨拶
○IMAGINATION OF 悪夢探偵2(静止画)
塚本監督直筆のビジュアルイメージを大公開!!

© 2008 NIGHTMARE DETECTIVE 2 FILM VENTURER

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