ウィーンに645年間君臨したハプスブルク家の歴代皇帝たちが蒐集した膨大な数の美術品を所蔵し、今年で創立125周年を迎えたウィーン美術史美術館。収蔵作品は、デューラー、クラーナハ、カラヴァッジオ、ベラスケス、ルーベンスなどの名画から、皇帝たちの、絢爛豪華な王冠や貨幣コレクション、黄金の塩入れといった美術工芸品など多種多彩。なかでも傑作「バベルの塔」をはじめとしたブリューゲル・コレクションは世界最多を誇る。創立120年の節目を迎えた2012年からスタートした大規模な改装工事に2年以上にわたり密着した監督と製作スタッフは、ナレーションやインタヴュー、音楽を一切排したダイレクトシネマの手法を用いて撮影。豪奢な天井画や壁画などまるで宮殿のような豪華な装飾とともに、改装工事の様子、美術品の収蔵庫、修復作業場、閉館後の館内や会議室など、ふだん見る事のできない美術館の姿をとらえていく。“偉大なる美術館”の裏側を隅々まで映し、そこで働く人々の姿を丁寧に描いた、芸術の世界をたっぷりと堪能できるドキュメンタリー映画!
「生き残るために、私たちはどうすればよいのか。」
「お客様係や警備係は下っ端じゃないのよ!」
「ハプスブルク。この名前があって日本での展覧会は大成功したのよ。」
「どうしてこんなにお金がかかるんだ?」
「フライ博士。お話なさるたびに予算が減ってるわよ!」
「予算が…」
「でも、せめて1点は落札したい!」
「新しいロゴをポスターにのせて、宝物館と馬車博物館に"帝国"をつける。
これで観光客もぐっと増えるよ」
「新しいロゴなんて初めて見たよ…建物の名称も変わるの?」
「これではアピールがまだ足りないかしら」
「新しいブランド戦略? 私はそういうことには関わっていないよ」
「画風がどこかルーベンスらしくないわ」
「虫が掘った穴があるし、ここは数十年分の汚れがたまっているわ」
「う~ん、これはどうなってるんだ?」
「ハプスブルグ家の伝統は時に重荷だよ…」
1960年、オーストリア、ザルツブルク生まれ。81年よりウィーン大学で美術史を学び、85、86年に共同で、国際的に著名な美術研究家や美術史家を招いて「アートとアートのコンセプト」と題した講義シリーズを開催。87年から95年までウィーン国立音楽大学の映画アカデミーに入り、初のドキュメンタリー作品『Those Loved by God』(92)を製作。高い評価を受け、多くの映画祭で上映される。卒業後、5年の歳月をかけてソ連の航空母艦に迫った長編ドキュメンタリー『On the Seven Seas』(01)を完成させ、02年のベルリン映画祭のフォーラム部門でプレミア上映された。その他、00年には、保守派のオーストリア国民党と極右のオーストリア自由党との連立政権の要請で、政治的な状況を描いた『Zero Crossing』を製作。初のTV作品としてバイエルン放送でオーバープファルツ地方における都市への移住について描いたものを製作する一方でドキュメンタリー作品 『Frauentag』(08)の製作も進めるなど、精力的に製作を続けている。